オンラインで行う株主総会バーチャル株主総会とは?|ハイブリッド型バーチャル株主総会のポイント

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新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、企業は可能な限りオンラインで業務を行うことが求められています。この動きは株主総会の開催も例外ではありません。

今回は経済産業省が推奨するバーチャルハイブリッド型株主総会の概要及びポイントについてご紹介します。

1.バーチャル株主総会とは

バーチャル株主総会とはインターネットを通して行う株主総会のことです。

株主総会に参加する株主はもちろん、主催する会社の取締役、監査役らは現地会場での参加またはウェブ会議ツール等を用いての参加のいずれかを選択できます。

これにより現地会場に集まる人の数を限定的にすることができ、新型コロナウイルス感染症に懸念がある方の参加も容易にします。

なお、現地会場を設けずに開催する、完全オンラインでの株主総会は現在の会社法では認められていません。

なぜなら株式総会の招集においては特定の場所を決めなければならないと定められているからです。

ですが、この会社法について現実にそぐわないと2021年2月5日、産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案が閣議決定されました。

この改正案にはバーチャルオンリー型株主総会の実現を可能とする内容が含まれており、今後の動向に関心が寄せられています。対象は上場企業のみではありますが、近い将来、完全オンラインでの開催もあり得るかもしれません。(※2021年5月28日時点)

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2.バーチャル株主総会のメリット・デメリット

バーチャル株主総会を実施することのメリット・デメリットは以下のとおりです。

▼メリット

・新型コロナウイルス感染症の感染リスクを減らす

3密になりやすい会場、お土産配布や株主懇談会、質疑応答等による接触感染や空気感染と株主総会には様々な感染リスクが考えられます。どんなに感染対策を講じていたとしても感染リスクをゼロにするのは難しいでしょう。

株主の安全第一を考えれば、極力人数を減らして開催するバーチャル株主総会が好ましいといえます。

・インターネット環境と端末があればどこからでも参加できる

都道府県によって感染状況が異なるため、国や自治体は県をまたいだ移動は極力控えるよう呼びかけています。そんな状況下でも、バーチャル株主総会ならインターネット環境と端末を準備すれば居住地関係なくどこからでも株主総会に参加できます。

時代の流れに応じて柔軟に対応する姿勢は企業のさらなるイメージアップにもつながるでしょう。

・情報及び資料の開示が容易

中継を生配信し株主総会の様子を公開することや議決権行使システムを使って株主からの議決権をリアルタイムで集計することなどが挙げられます。

バーチャル株主総会ならオンラインならではの技術を活用した、より透明性の高い株主総会を実現できます。

▼ デメリット

・企業の配信環境と株主の視聴環境の構築

企業の配信環境に対する準備においては議決権行使や出席の取り決め等バーチャル株主総会ならではの運営方法を確認し、実際に運営していくことが必要です。加えてライブ配信する場合は配信環境や質疑応答、議決権の集計をどうするかといったことも決めていくことになります。

株主の視聴環境に対する準備においては株主が参加または出席できるように配慮することです。主に手順書の作成が挙げられますが、年齢層の高い株主は端末の操作に慣れていない人が一定数いることが予想されます。可能であれば電話相談窓口を設けるなど、手順書以外の対応も検討しておくと良いでしょう。

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・セキュリティ対策の課題

現地会場と株主との間で情報伝達が双方向で滞りなく行われるためにも、サーバーダウンやサイバー攻撃といった通信障害に備える必要があります。

対応策としては、セキュリティの高いシステムを採用する、株主固有のIDとパスワードを発行するほか、セキュリティに関する疑問・質問を気軽にできるプロがいると安心でしょう。

3.経産省が推薦するハイブリッド型バーチャル株主総会とは

新型コロナウイルスを機に認知度が高まったバーチャル株主総会ですが、実は経済産業省は2018年「さらなる対話型株主総会プロセスに向けた中長期的課題に関する勉強会」や2019年「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」等で議論を行い、環境整備を進めていました。

そして2020年に「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」、2021年に「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド(別冊)実施事例集」を公表しました。これらは現在、企業が参照する指針の1つとなっており、本記事でも参考にしています。

ハイブリッド型バーチャル株主総会のハイブリッドとは2つ以上のものを組み合わせたものという意味です。バーチャル株主総会においては現地会場とオンライン会場の2拠点での開催という意味で使われています。

このハイブリッド型バーチャル株主総会は法的に出席扱いになるかによって、出席型と参加型の2種類に分かれています。開催方式はどちらも同じですが、株主ができることの範囲が異なります。

出席型では、株主は法的に出席したものと認められます。そのため株主は企業の情報を確認・傍聴できることに加えて議決権を行使したり企業に質問したりすることもできます。

対して参加型では株主は法的に出席したものと認められないため、株主ができることは企業の情報を確認・傍聴することのみです。出席型のように議決権を行使したり企業に質問したりすることはできませんが、企業が質問に準じた発言をコメントという形で受け付けることは可能です。

・ハイブリッド出席型バーチャル株主総会

株主は株主総会の審議等を確認・傍聴、議決権行使、質問ができます。

開催方式:現地会場とオンライン

法律上の扱い:出席

株主ができること:審議等の確認、視聴、議決権行使、質問

メリット:株主は質疑応答や取締役、監査役の発言等を踏まえたうえでの議決権行使ができる

デメリット:事前の議決権行使率の低下、当日集まった議決権行使を反映するための環境構築

・ハイブリッド参加型バーチャル株主総会

株主は株主総会の審議等を確認・傍聴できます。

開催方式:現地会場とオンライン

法律上の扱い:欠席

株主ができること:審議等の確認、傍聴、コメント(企業が受け付ける場合のみ可能)

メリット:株主の参加・傍聴率の増加、参加方法の多様性

デメリット:年代や国籍を問わず様々な株主がスムーズに参加できる環境整備

なお、先ほど現在の会社法では認められていないと説明した現地会場を設けずに株主、取締役、監査ら全員がオンラインで開催する株主総会はバーチャルオンリー型と呼ばれています。

4.バーチャル株主総会運営のポイント

運営するにあたって留意しておきたいバーチャル株主総会ならではのポイントをまとめました。

・株主本人確認

株主総会に参加して議決権を行使することは権限を持つ人物に限られたものです。なりすましや不正アクセス等、株主以外の人がログインできないようセキュリティを厳しくすることは重要です。

対策としては株主一人ひとりに固有のIDとパスワードを配布するのが一般的ですが、一定数以上の議決権を持つ大株主の場合は、より厳重な本人確認を推奨します。

テクノロジー企業のZホールディングス株式会社は株主番号、郵便番号、株式数という3つの固有情報を用いて認証を実施しました。

・議決権の行使と採決

バーチャル株主総会の場合、現地開催の受付のようにログインを基準に事前の議決権行使を破棄すると株主の意思に反して無効票が増える可能性があることに留意しておきましょう。

なお、経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」では、当日の採決のタイミングで事前の決議権行使と異なる議決権行使が行われた場合に限り、事前の議決権行使の効力を破棄することを認めています。

通常の株主総会とは異なる点がある議決権の行使と採決は、招集通知等で株主に事前周知するようにしましょう。

また、ブロックチェーン技術や本人確認システムといった仕組みを取り入れて議決権行使の結果が改ざんされないようにすることも重要です。

・通信障害があった場合の対応

経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」では企業が通信障害のリスクを事前に株主に告知し、かつ、通信障害防止のために合理的な対策を取っていたにもかかわらず通信障害が生じてしまった場合は決議取消事由には該当しないという見解を示しています。

企業が事前にできる通信障害への対策は、以下のようなことが挙げられます。

  • 議決権行使は事前に済ませて出席してもらうよう株主に告知する
  • 事前登録制にし、登録者人数分の負荷に耐えられるサーバーを構築しておく

・肖像権やプライバシー権の配慮

株主総会の様子を配信する場合、株主の肖像権やプライバシー権への配慮が必要です。承諾なしに株主の私生活や容姿等がみだりに公開されないよう、企業は株主を配信の対象から除外する配慮が求められます。具体的には以下のような方法が考えられます。

  • 質問は氏名ではなく出席表の番号にする
  • 口頭ではなくテキストに打ち込んでもらう
  • カメラに映すのは取締役及び監査役のみにする

・賛否の確認方法

バーチャル株主総会ではシステムを活用することで議決権行使の結果をリアルタイムで公表することが可能です。バーチャルでの開催は臨場感に欠けるという声をよく聞きますが、このような確認方法は株主に臨場感を与えられると考えられます。

さらに臨場感を出す方法としてはWeb会議ツールにあるような拍手などのボタンを設置することも有効です。

5.バーチャル株主総会を実施した企業

ここでは、2021年にバーチャル株主総会を実施した企業をご紹介します。

・サイボウズ株式会社

グループウェアの開発・販売を手掛けるサイボウズ株式会社は2021年3月28日に第24回定時株主総会を実施しました。開催形式はハイブリッド出席型です。

こちらの株主総会ではオンラインで参加する株主も来場している株主もスマートフォン等の端末を用いてオンラインで議決行使が実施されました。

通信障害の対策についてはメインとサブ2つのシステムの設置されており、片方のライブ配信のシステムでの視聴に支障がある場合はもう片方のほうで視聴できるよう、2つの視聴用URLを招集通知で周知していました。

・株式会社global bridge HOLDINGS

保育、介護、ICT事業を行っている株式会社global bridge HOLDINGSは2021年3月26日に第6回定時株主総会を開催しました。こちらの開催形式はハイブリッド参加型です。

バーチャル株主総会の様子はYouTubeでライブ中継され、来場できない株主だけでなく一般の人も視聴できるという開かれたものになっていました。

様々な企業がバーチャル株主総会を開催していますが保育業界では珍しく、保育とICTを強みとしているこの企業ならではの積極な取り組みであることがうかがえます。

今回はバーチャル株主総会の概要や留意点等をご紹介しました。

2020年から2021年にかけて開催の動きが広まっているバーチャル株主総会。しかし、その開催方法はまだまだ確立していないことも多く、手探り状態で実施しているところが多いのが現状です。

ハイブリッド株主総会は配信環境の構築だけでなく議決権行使等、法律上の観点で留意すべきことも多いです。そのためオンラインセミナーやイベントよりも開催におけるハードルが高いと感じている方もいるかもしれません。

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