新型コロナウイルス感染症の影響により、学会のオフライン開催は依然として厳しい状況が続いています。そんな中、新たな開催方法として急速に進んでいるのがオンライン学会です。
ここではオンライン学会のメリットやデメリット、開催方法や注意点についてご紹介します。
1.新型コロナウイルス感染症の影響
2020年から本格的に蔓延し始めた新型コロナウイルス感染症は、今もなお世界中で猛威を振るっています。
不要不急の外出自粛や収容率及び上限人数の制限といった規制が政府から呼びかけられているため、学会をはじめセミナーやカンファレンス、展示会等、様々なイベントのオフライン開催は軒並み中止または延期を余儀なくされる事態となっています。
海外渡航においてはPCR検査陰性証明書の提出や入国後一定期間隔離と、いつも以上にスケジュールに余裕を持って行動する必要があります。
ワクチン接種の普及によって一部の国では規制が緩和されつつありますが、コロナ前の日常生活に戻るまでには、まだまだ時間がかかるでしょう。
2.学会を含む様々なイベントがオンライン化
そんな中、打開策として進んでいるのがイベントのオンライン化です。
新型コロナウイルス感染症の蔓延長期化を見越し、従来のオフライン開催からオンラインへ舵を切ったイベント事業者が続々とオンライン開催を実現しています。
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このオンライン化の流れは学会も例外ではありません。
オンラインでの学会開催は難しいとお考えの方も多いかもしれませんが、複数のツールやサービスを組み合わせることで口頭発表からポスター発表、シンポジウムの開催といった従来の学会で開催していたプログラムのほとんどをオンラインで開催できるようになります。
3.オンライン学会のメリット
学会がオンライン上で開催する方式になった場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
・より集客、参加しやすくなる
オンライン学会はパソコンとインターネット環境があれば、どこからでも参加できます。
そのため時間や移動距離の制約がなくなるため、参加者がより参加しやすくなります。
例えば、
- スケジュールが合わない
- まとまった時間を確保できない
- 交通費の負担が大きい
- 宿泊を伴う移動ができない
- 子育てや介護があって外出できない
このような理由で参加を諦めていた人たちの参加が見込めるため、参加者数の増加が期待できます。
他にも、例えば単位取得を目的に参加する学生も移動の負担がなくなることで気軽に国内外の学会へ参加することが可能になります。
・論文や発表をいつでも見ることができる
学会によっては発表動画を事前に収録する等していつでも視聴ができる環境を整えている場合もあります。(後述する「オンデマンド配信」形式の場合)
事前収録した動画は再生、一時停止、巻き戻し、先送り、2倍速再生等の操作が自由自在です。
通常の学会ではメモをしたり調べ物をしたりしながら聴講していると聞き逃してしまった箇所や一度で理解できなかった箇所があって困ってしまった参加者もいたのではないでしょうか。
ですが、事前収録した動画ならそのような状況を回避することができます。
また、会場の席によっては発表スライドが遠くて見えにくいと感じていた参加者もいたと思います。
ですが、オンライン学会では資料が自分の端末上に表示されるので、細かいところまで目視することができます。
4.オンライン学会のデメリット
多くのメリットがある一方で、発表者と参加者が同じ会場に集まっていないことで生じるデメリットがあります。
・視聴環境によって満足度が左右される
視聴する端末の性能やインターネット環境によっては動きが遅かったりフリーズしたりと、スムーズに見れないことから満足度が左右される恐れがあります。
下記に動画の再生に必要な機能をまとめました。あくまでも目安ですが参考にしてみてください。
- データ処理スピード):Intel Core i3以上
- (1度に処理できるデータ量):8GB以上
- (データ保存場所):256GB程度
- 3Mbps〜25Mbps
また、オンライン動画を視聴するのに必須なのが、インターネット環境です。回線スピードも関係してきますが、少なくともWi-Fi接続よりも有線LANの利用を推奨します。
パソコンにLANケーブルを直接挿すため通信障害が起きにくく安定的に通信を行うことができますし、通信内容を傍受される危険性がWi-Fiよりも低いため、セキュリティ面でも安全です。
・顔が見られず雰囲気が汲み取りづらい
オンライン学会に限らずあらゆるオンラインイベントで挙がるのが、雰囲気が汲み取りづらいというデメリットです。
実際に「発表者の熱量が伝わりにくい」と参加者が思う一方で「聴衆の反応がわからずやりにくい」と感じる発表者は多いようです。
臨場感が欠けるというデメリットがあるオンライン学会においては運営側が「研究成果を報告し合う場」「議論を交わす場」そして「交流の場」として機能するための工夫を設計できるかがカギとなります。
例えば動画は事前収録+質疑応答はリアルタイムで行う、Zoomのブレークアウトルーム、Remo、OViceのようなバーチャル空間を用意し、質疑応答以外でも参加者同士で話し合える場を用意するといった方法があります。
5.オンライン学会の様々なやり方
オンライン学会のやり方は多種多様ですが、大きく分けるとオンデマンド配信とライブ配信の2つに分けられます。
▼オンデマンド配信
オンデマンド配信とは、特設サイトにアクセスすればいつでも好きな時に資料や動画を視聴できるものです。
・事前収録した動画を公開
発表者が事前収録した動画を受け取り、特設サイト上に公開します。
発表者の納得がいくまで何度でも撮り直しができる半面、撮影に苦労する発表者も多いことが予想されるので、運営側のフォローは必須です。
・資料のみを公開
論文や抄録、発表スライドのみを公開する方法です。動画を扱わない分、運営側も発表者側も準備の負担が若干、軽くなります。
▼ライブ配信
ライブ配信とは、プログラムで決められた時間でのみ視聴できるものです。
・ライブで動画や資料を公開
配信ツールを用いてライブ配信する方法です。
事前収録した映像を定刻に配信してライブ配信しているかのように見せる方法とZoom等の配信ツールを使って発表者がリアルタイムで発表する方法があります。
・会場とオンラインの両方で公開
現地でオフラインでの開催をしつつ、その様子をオンラインでも配信するという新たな試みです。この方法はハイブリッド配信ともいわれています。
会場とオンライン両方の準備をするため、人員や予算の面で運営にかかる負担が大きくなる懸念点はあります。ですが、オフライン会場での参加を希望する方とオンライン視聴を希望する方の双方を集客できるメリットがあります。
6.オンライン学会の進め方・必要なもの
ここでは従来の学会とは異なるオンライン学会ならではの進め方や必要なものを中心にご紹介します。
▼準備
・概要及び全体の流れの設計
まず、従来のように学会テーマ、プログラム、会期や開催方法(オンデマンド配信・ライブ配信・ハイブリッド配信)等を決めていきます。
イベントの開催要件が整理できたら、実施にあたり委託業者へ見積もり依頼し、選定を行います。
その際に必ず確認したいのが、オンライン開催するためのWebサイトの準備です。一例ではありますが、以下のような機能が必要になります。
- 参加者登録(参加申込)
- 演題登録及び演題査読
- オンライン決済(有料の場合)
- プログラム編成
- Web抄録
他にも学生に対して単位認定が必要な学会の場合は受講証明書発行等の機能も必要になってきます。
最近ではこれら機能を備えるサービスが増えてきましたが、例えばConfitというサービスは学会開催に特化しており、プランによって使用できる機能は異なりますが、参加者情報、演題登録、オンライン決済等、オンライン学会に必要な機能がそろっています。
・オンライン配信環境

準備の中でも特に重要なのがオンライン配信の環境を整えることです。口頭発表、ポスター発表、講演等をどのように配信にするのかによって準備の仕方は変わってきます。
ライブ配信で使われる配信ツールはVimeoやZoom、YouTube等がありますが認知度が高いのはZoomです。ここではZoomのプランについて2点、注意点をご紹介します。
1つ目は有料ライセンスのプランによって1つのミーティングに入室できる人数が異なることです。プロ版は100名、ビジネス版は300名、エンタープライズ版は500名まで入室可能です。
また、ウェビナー機能を追加契約すれば最大10,000名までの参加を可能にします。有料ライセンスを購入する前に1つのプログラムに収容する人数の上限を確認しておきましょう。
2つ目はZoomの1つのアカウントを使って複数の発表を同時開催したい場合、Zoomの有料ライセンスを契約していることに加えて同時開催分のホストを用意することが必要です。ホストとはミーティングを主催できる権限のことです。
例えば午前10時から3本の発表を同時開催したい場合は、ホストを3つ用意しておく必要があります。
その他、オンライン配信が問題なくできるか会期までに入念なリハーサルをしておきましょう。特に発表者の画面共有は念入りにリハーサルすることを推奨します。
この中で失念しがちなのが発表スライドをピンポイントで示す際に使うポインターの使い方です。
例えば医学会の発表で肺に影があるという話をしている時にポインターで該当箇所を指せないとなると、参加者からはどこのことを言っているのかわからないと困惑するかもしれません。
Zoomでのポインターの出し方は以下のとおりです。
1.画面共有したあと、メニューの「コメントを付ける」をクリック
2.ツールバーの「スポットライト」をクリック
画面操作に不安を感じている発表者がいる場合は運営側で資料を預かっておき、万が一の時には運営側のほうで画面共有を行うように備えておくと良いでしょう。
■関連記事:【初心者必見!】オンラインイベントなどでの、オンライン配信のやり方や注意点をご紹介
・マニュアル作成
昨年から開催が増えたオンライン学会ですが、操作方法がわからない人や配信ツールを知らない人は多いです。
そのため、何をすればいいのかわからない人が大半だということを前提に座長向け、発表者向け、参加者向けと、対象者別のマニュアルも作成することをオススメします。
マニュアルといってもA4の2~3枚程度に以下のような要点をまとめるだけで十分です。可能なら文章とともに操作手順の図を添付できると丁寧です。
- 入退室の仕方
- 表示名の設定
- マイク&カメラのON/OFF切り替え
- 画面共有の仕方
- チャット機能の使い方
▼当日
・発表及びファシリテーション
ライブ配信する場合、一番心配なのはスムーズに配信できるかという点です。
リハーサルでは問題がなくても当日にトラブルが発生することは往々にしてありますので、万が一に備えて配信中のトラブルにすぐ対応できる技術スタッフをスタンバイさせておくと安心です。
・オンラインでの質問受付
参加者と発表者の交流の機会を創出するため、会期中はメールやチャット、掲示板を使って質疑応答の場を設けることをオススメします。
ツールはGoogleフォーム、slido、Slack等があります。ツールを使うことで質疑応答以外の時間でも参加者と発表者がじっくり議論できるのがメリットです。
ただし、発表者によってはタッチタイピングが苦手な人もいると予想されるので、代わりに入力するスタッフを配置しておくと良いでしょう。
7.オンライン学会の事例
最後に、これまでに開催されたオンライン学会の事例を3つご紹介します。
・第79回日本公衆衛生学会総会
2020年10月20日(火)~22日(木)の3日間オンラインで開催されました。
プログラムは定刻にリアルタイムで配信するライブ配信、事前収録した動画を決まった時刻に配信する定刻配信、事前収録した動画を参加者の好きなタイミングで視聴できるオンデマンド配信の3パターン。会期終了後も多くの演題がオンデマンド配信されました。
・第35回日本助産学会学術集会
2021年3月20日(土)~21日(日)の2日間オンラインで開催されました。口頭発表はライブ配信のみ、一部の講演やシンポジウムはオンデマンドまたはライブ配信終了後、オンデマンド配信するというように、配信方法を柔軟に使い分けていました。
・第41回日本アフェレシス学会学術大会
2020年10月23日(金)~10月24日(土)の2日間、千葉県の東京ディズニーシー・ホテルミラコスタで開催されました。開催形式は現地会場とオンラインのハイブリッド配信です。
コロナ禍での現地開催ということもあり徹底した感染症対策を行い、安心安全な学会運営を実現しました。
今回はオンライン学会の進め方と注意点をご紹介しました。
オンライン学会の開催には特設サイトの設計やオンライン配信の設定、本番中のトラブル対応と新たに構築すべきことがたくさんあります。
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