現実世界と仮想世界が共存するバーチャルイベントが、オンラインイベントに続く新たなイベントの形態として注目を集めています。
ここでは今注目されているバーチャルイベントとは何か、今までのオンラインイベントと何が異なるのか、その概要や開催方法について実例を交えながらご紹介します。
1.バーチャルイベントとは
バーチャルイベントとは、仮想空間と呼ばれるオンライン上に作られた空間で開催するイベントのことです。
現実世界と同じような空間を忠実に再現することも、オンラインならではの新たな空間を作り出すこともバーチャルイベントなら自由自在です。
今流行のZoom等の配信プラットフォームを使ったイベントも、仮想空間で開催するバーチャルイベントも、同じオンラインイベントと呼ばれるものではありますが、バーチャルイベントの特徴は、開催する場所が「立体的な」仮想空間という点です。
ここでバーチャルイベントに関連するAR、VR、MRの総称、xRについて補足します。
VR(Virtual Reality)は仮想現実という意味です。まるで自分が仮想空間の中にいるような感覚を体験できる技術です。
仮想空間と仮想現実は一見、似ているように見えますが仮想空間はオンライン上に作られた「空間」、仮想現実は仮想空間に自分がいるかのような疑似体験ができるという「技術」を指していますので、2つは違う言葉です。
なおバーチャルイベントは、このVRを活用したものがメインとなります。
MR(Mixed Reality)は複合現実という意味です。空間情報を持つCGなどのデジタル情報を「あらゆる角度から」「実物大で」確認できるほか、デジタル情報に触れると反応が返ってくるという仮想世界と現実世界の連動を体感できます。
2018年に開催されたゴジラ・ナイトでは専用のツールを装着し、実物大のゴジラが目の前にいるかのような体験ができるイベントが開催されました。
AR(Augmented Reality)は拡張現実という意味です。こちらはMRのような空間情報はないため、立体的には見えません。デジタル情報と現実世界が重なって映し出されるというイメージです。
2017年に開催されたドラゴンボールランでは、指定のARアプリで紙媒体等をかざすとキャラクターが登場し、参加者とキャラクターが一緒に写真を撮れるという形でARが活用されました。
2.バーチャルイベントの例
時代に先駆け、いち早くバーチャルイベントを実現した事例をご紹介します。
▼Kizuna AI 2nd Live “hello, world 2020”
まずは、音楽イベントです。
2020年にバーチャルタレントのKizuna AIがオンラインで開催したライブです。サイバーエージェントグループの最先端機材及び設備とKizuna AI株式会社のxR技術が相乗効果を生み、現実世界のパフォーマーと仮想世界のKizuna AIが同じ空間にいるかのような一体感を感じさせるライブが実現しました。
このライブはYouTube、U-NEXT、TikTok、bilibili(中国の動画共有サイト)、Oculus Venues(VR映像プラットフォーム)で同時配信され、推定10万人以上に視聴されました。
▼Da-iCE×ABEMA ONLINE LIVE TOUR 2020 -THE Da-iCE-
5人組ダンス&ボーカルグループのDa-iCEが2020年に行ったオンラインライブです。会場はリアルタイムで人とCG背景の合成が可能なバーチャル会場、ABEMAアリーナ。
そのため、楽曲ごとに背景を切り替えたり、アーティストの掛け声が文字となって映し出されたりするという、バーチャル会場ならでは演出が披露されました。
ABEMAの有料オンラインライブPayPerView内にオープンしたこのABEMAアリーナは、バーチャルとリアルの仕組みが掛け合わさった新たなライブエンターテインメントとして関心が持たれています。
▼バーチャル成人式
次は、交流イベントです。
バーチャル成人式は2021年、バーチャルSNS、clusterで開催されたイベントです。会場となった仮想空間のVR札幌には大通公園やテレビ塔が映っており、札幌の街並みを彷彿させるものとなっていました。
大学生の宮川滉平さんがVRコミュニティーのVR∞Mとともに開催したこのイベントでは、合唱動画や打ち上げ花火、参加者による振袖披露等が行われたこのイベントには北海道札幌市の新成人等など800人以上がアクセスし、その様子はメディアにも取り上げられました。
▼バーチャル展示会・展覧会
最後は、展示会・展覧会です。
バーチャル展示会では2021年、「介護・医療・福祉バーチャルEXPO 2021」と題した介護・医療・福祉業界向けの展示会が開催されました。
介護・福祉のハートサービスと3DCG制作会社のスペースラボが共同開催したこのイベントはおよそ40社が出展し、セミナー、資料ダウンロード、商談の予約、名刺交換やチャット等がオンライン対応。
そのため、新型コロナウイルス感染症対策に気を遣う介護や医療従事者も安全に参加を楽しめる展示会となりました。
バーチャル展覧会の例では神奈川県横浜市にあるギャラリー、AAA GALLERYがホームページで公開しているものです。
2階建てのギャラリーは空間ごとに区分されており、閲覧したい場所をクリックすると360°カメラで撮影された写真が表示されます。この写真を通じて、クリエイターの作品を鑑賞できます。
Google ストリートビューのように実在する物や場所の様子を360度見渡せるバーチャル展覧会は、現地に足を運べなくても雰囲気を疑似体験できる点が魅力的です。
3.バーチャルイベントで可能なこと
パソコンやスマートフォン、タブレット等の端末があれば開催可能なバーチャルイベント。仮想世界を会場にすると、どのようなことが可能になるのでしょうか。
リアルタイム分析
商品・サービスのクリック率、ブース滞在時間、動画視聴、ウェブセミナー参加有無まで、これまで把握できなかった参加者の1つ1つの行動データがリアルタイムで取得可能です。
主催者側がこの行動データを活用できればその後の営業に活用できるだけでなく、エンゲージメント向上や今後のイベント開催の参考にすることが可能となります。
分析には知識と経験が必要となりますので、本格的に分析をする場合は経験者をアサインするか、協力企業に依頼をすると良いでしょう。
運用コストの削減
オフラインイベントでかかっていた会場及び機材のレンタル費、設営費、人件費、飲食費、参加者に配布する資料やノベルティーの制作費等が削減できます。
また、準備のために会場を行き来する時間と交通費を削減できるのも大きなメリットです。
その一方で、新たに発生するのがバーチャルイベントの会場制作費です。
仮想空間のデザイン、アバター、Webシステム等がまとまっているプラットフォームを使えば比較的費用は抑えられますが、思い描くイベントの理想をすべて叶えるためにはそれなりの費用が必要となります。そのため、予め制作予算を決めておき、取捨選択をしていくのが良いでしょう。
場所を選ばないこと
バーチャルイベントは感染症対策を気にせずに参加できるという安心感と自分のペースで会場内を見て回れるという快適さを参加者に提供することができます。
また、会場まで足を運ばなくて良いことによって物理的に遠くて行けない人や多忙で予定を空けられない人の参加も可能になるので、さらなる集客が見込めます。
一方で、いつでも、どこからでも参加できるという部分は参加のハードルが低い分、イベントに対する関心度が高くない人やバーチャルイベントの雰囲気を知りたいだけの人、商品・サービスに興味がさほどない人の参加も多くなるリスクがあります。
そういったイベント特性を踏まえて、参加者の興味・関心を高め、商談獲得や売上につなげたい場合は、バーチャルイベントのノウハウを持つプロの力を借りることも検討すると良いでしょう。
4.バーチャルイベント開催方法
バーチャルイベントの開催方法を、ポイントとともに紹介していきます。
イベント全体の計画をする
オフラインイベント同様、まず作成するのが企画書です。
- 開催目的
- ゴール設定
- ターゲット
- 予算
加えて、バーチャルイベントではイベント配信プラットフォームを決めます。
会場の土台となるイベント配信プラットフォームは、イベントに必要な条件を満たしているものを選びましょう。
例えば機能面では、交流を促すチャット機能や動画配信機能、営業活動に関わる商談予約機能や資料ダウンロード機能、その場で販売する場合は決済システムを備えている必要があります。
また、会場の形式は大きく2パターンのどちらかを選ぶことになります。
1つは立体的な仮想空間を自由に歩いたり見渡したりできる3DCGタイプ、もう1つは360度カメラで実際の会場を撮影した写真や動画を特設サイト内に公開するタイプです。
必要なものを準備
計画をもとにバーチャルイベントに必要なものを制作依頼したり設定したりします。
イベントによって必要なものは異なりますが、以下は一例です。
- 会場(イベント配信プラットフォーム内に通常テンプレートはありますが、自作する場合はゲームエンジンソフトのUnityや3Dモデリングソフトのblender等を使用)
- 参加者がダウンロード可能なパンフレット等のデータ
- 配信用の画像や動画
- 表示する商品・サービス
- アバター
- イベント特設サイト
- イベントのサムネイル(Canva等)
また、来場者がいなければそもそものイベントが成立しませんので、イベントが決まり次第早めに告知をするようにしましょう。
■関連記事:効果的なイベント告知方法とは?|イベント集客・成功に導く告知のポイント
イベントを開催
予期せぬトラブルを極力減らせるよう、本番の1週間前からリハーサルを行って使い勝手や運営方法等をスタッフで共有しておきましょう。
イベント配信プラットフォームではリンク知っている人のみに限定公開することも可能です。
また、当日は参加者の行動データをマーケティングや営業部門にも共有して次のイベントに活かしていきましょう。
5.バーチャルイベントのコツ
バーチャルイベントのコツは、仮想空間の事前確認です。
パンフレット配布などオフラインでもできることは最大限に利用しつつバーチャルとリアルが融合したイベントを創出したいところです。
全体像が仮完成してからは使用感を確認したり修正したりしてより良いものになるようにリハーサルを重ねましょう。
また、イベント中は、バーチャルイベントに初めて参加する人が多く来ると予想されます。
ほかのバーチャルイベントに参加してみて感じた良い点、悪い点を自分のイベントに反映するのも良いでしょう。
また、気をつけておきたいのがサーバーの負荷です。
バーチャルイベントに一気にアクセスが集中することによってサーバーがダウンし、中止や延期になってしまうこともあり得ます。
実際に2020年、バーチャルSNS、clusterで開催されたバーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェスではアクセス集中によりサーバーがダウンしイベントが延期になるという事態がありました。
そのため、事前の申し込み数などから推測してサーバーを強化するなど配信環境を整えることは極めて重要となります。
6.バーチャルの需要は増えていく
今回はバーチャルイベントについてご紹介しました。
バーチャルイベントはオフラインイベントの代替策で終わらず、SNSのように情報の発信や受信する手段の1つとして定着していくでしょう。
まだまだ発展途上のイベント分野ではありますが、メリットも十分ありますので、今後も伸びていくことは間違いありません。
今のうちから少しずつこの最新技術を身に付け、数年後、完成度の高いイベント開催を目指すこともひとつです。
Event Bundleでは、こうした最新技術やノウハウを持つプロフェッショナルが所属しています。バーチャルイベントのイベント運用はもちろんのこと、営業やマーケティングのノウハウ等のアドバイスや代行も可能です。
もしイベントでお困りごとがございましたら、ぜひ一度、Event Bundleへご相談ください。