イベントの主催者にはイベントを企画・運営するという決定権がある一方で、会場にいるスタッフや関係者、参加者の安全を確保する責任が伴います。
大盛況のうちに幕を閉じ、充実感を得られるか。それとも、ミスや手違いで予定どおりにイベントが進まないどころか参加者に迷惑をかけてしまうか。
イベント当日どちらの結果になるかは主催者次第と言えます。
ここでは、イベントの主催者がすべきこと・注意すべきことについてご紹介します。
1.イベントの主催者がすべきこと
具体的に「主催者」として何を行うべきか、イベントを開催するにあたって必要な準備内容とポイントを以下にご紹介します。
▼イベントの企画
①イベントの目的・コンセプトを決める
イベントを企画するにあたり、まず初めに準備する必要があるのがイベントの目的・コンセプトを決めることです。
ポイントは目的・コンセプトを1つにすることです。
複数設定することも可能ではありますがここを1つに絞ることによって、より企画内容がシャープになり、ターゲットに対して刺さるコンテンツやメッセージを作ることができるようになります。
目的を複数設定する場合は、目的ごとの仕掛けやコンテンツを準備するだけでなく、イベント全体の一貫性にも配慮して設計する必要が出てきます。
ここを疎かにすると、何が目的のイベントなのか不明確になり、ターゲットにも刺さりにくいイベントになります。
その結果、集客ができないといった課題が生じることにもつながりかねません。
そのため、イベント企画に慣れていない方は特に1つに絞ることをオススメします。
②イベントの流れを決める
イベントの目的・コンセプトが決まったら、次に準備すべきなのは「イベントの流れ」を決めることです。
ここでのイベントの流れとは、イベント自体の流れももちろんですが、当日または前日準備から開催後の撤収部分までを指します。
ここで決めた流れが今後のベースとなりますので、全体像を捉えて設計をしましょう。
準備と撤収を含む当日のタイムスケジュールや登壇者・参加者の導線、運営関係者ごとの動き等、決めておくと後々楽です。
③予算の管理
イベントの準備を進めていくうちに追加コストがかかり予算オーバーしてしまうというのは、経験が乏しい主催者にはありがちな失敗です。
こうした予算オーバーを防ぐには、企画時から項目ごとの予算を細かく洗い出し、想定よりも少し余裕を持って多めに見積もることです。
例えば機材レンタルには、機材レンタル代のほかに機材のグレードアップにかかる費用、機材の運搬費、故障等が起きた時の補償サービスに加入するといった追加費用がかかることが良くあります。
また、要件定義ができていないことによる発注側と受注側の齟齬によって追加費用がかかることがあります。
ただし、このような細かい費用の算出や準備不足による予算オーバーは、イベント主催の経験が浅い場合完璧に防ぐことは難しいです。
そのため、限られた予算しかない場合や細かな算出が難しい場合はイベントに精通したプロフェッショナルに企画段階から依頼するのが安全です。
▼イベント当日までの準備
①会場の確保
イベントを実施するには多くの場合において会場を確保する必要があります。
会場を押さえる場合、以下の2つのポイントは最低限押さえておきましょう。
・イベントの内容や規模に合っていること
集客人数によって会場の広さを決めることは想像できることだと思います。
イベント会場を提供している会場のHPを確認すると目安となる使用人数が記載されていますが、この使用人数を鵜呑みにしてしまうと、こんなはずではなかったと後悔する場合があります。
例えば、会場によっては長机を3名席としてカウントしていることがありますが、大人の男性に座ってもらうと窮屈であることがしばしばあります。
あまりにも窮屈だと満足度にも影響してきますので可能であれば現地を視察する等して確認をしましょう。
その他、イベントの演出内容によって必要な機材や備品は異なります。
照明やプロジェクター、ホワイトボード、その他機材が利用または持ち込み可能かといった設備面の確認をする必要があります。(特に飲食を伴うイベントの場合は指定業者があるか、持ち込みは可能かを必ず確認してください)
音楽イベント等大音量を出す前提のイベントであれば、歌唱や楽器の演奏可であることの確認はもちろんのこと、会場の形状によって音の広がり方の良し悪しといった点を確認する必要があります。
・優先順位を決めること
住居を探す際に希望どおりの物件がなかなか見つからないように、イベント会場選びも条件を全て満たした会場を見つけることは難しいです。
ですので、ある程度折り合いをつけられるよう、会場選定の際に主催者や関係者間で優先順位を決めておくと、スムーズに選定できることでしょう。
特に会場にかけられるコストについては後々大きく影響してきますので、この部分の目線合わせをしておくと安心です。
②スタッフの確保
受付、司会者、会場案内、音響・照明の操作等、必要に応じてスタッフを手配します。
イベント本番はタイムスケジュールに沿って同時進行で複数人のスタッフが動くことで成り立ちます。
仮に、スキルや経験が不足しているスタッフで全体を構成してしまうと、想定外の事態が起きる可能性が高くなることや最悪の場合イベント全体の流れを止めてしまいかねません。
スタッフを外注する場合コストがかかる部分ではありますが、ここはコストをかけてでも現場に慣れている熟練のスタッフを現場責任者やリーダーとして役割ごとに配置するようにすると安心です。
スタッフを集める際のコスト相場は、スタッフのスキルや目的に応じて異なります。
スキルよりも人数が必要という場合はイベント派遣会社(例:1人1万5000円~)、スキルのある人が必要という場合はイベント運営会社((例:ディレクター・AD 1人3万円~)に依頼するなど、使い分けをするとニーズに合ったスタッフを手配しやすいです。
ただし、別のイベント派遣会社から派遣されてきたスタッフをイベント運営会社手配のディレクターでマネジメントすることは原則できませんので、相談が必要です。
③スタッフの行動マニュアル作成
スタッフを確保したら、スタッフに配布する行動マニュアルを用意します。
役割ごとの仕事内容、仕事の流れ、行動規範、スタッフ間の共通認識、Q&A、イベント当日までに覚えるべきことを記載します。
行動マニュアルを事前に作成配布する意図としては、当日主催者側が説明する工数の削減やスタッフが自ら考えて行動できる下地を作ることが主となります。
マニュアルなので、事細かくすべてを網羅できればベストですが、それが難しい場合はA4の紙数枚程度に要点記載するだけでも効果的です。
④イベントの宣伝
イベントの宣伝は他の準備と並行して行うものです。当然ながら、どんなに魅力的なイベントを企画していてもターゲットに情報が届かなければ集まるものも集まりません。
イベントの宣伝はイベントに集めたいターゲットによって告知媒体を選びましょう。
既存顧客向けのイベントであれば、既存顧客へのメール配信やSNS等のコミュニティへの投稿をすることが効果的となります。
また新規顧客向けであれば自社HPへの掲載、メルマガ配信、イベント告知サイトの活用、オンライン広告配信、プレスリリース配信、Podcastやラジオなどの音声広告等と、多岐にわたります。
これら広告媒体の中から、ターゲットに合った告知媒体を用い、ターゲットに刺さるメッセージを発信することで、効果的にイベントへ集客することができます。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
■ 関連記事:効果的なイベント告知方法とは?|イベント集客・成功に導く告知のポイント
⑤イベントの機材・備品準備
「会場の確保」の項目でも触れましたが、イベントで使用する機材や備品の準備・手配も行いましょう。
椅子や机、プロジェクター、ホワイトボード、マイク、音響設備、インターネット回線、パーティション、プリンター等、イベントに必要なものは会場でレンタルできるものとできないものがあります。
自身や会場で手配できないものはレンタル会社からレンタルすることになります。
当日対応不可のものが多いので、事前に必要なものをリスト化し、漏れがないようにしましょう。
どのようなものが、どのくらいコストとしてかかるのかは以下の記事でもご紹介しているので参考にしてみてください。
■ 関連記事:【初心者向け】イベント運営でかかる費用項目・相場をご紹介!
⑥参加者の情報管理
参加者の情報管理も主催者の大切な仕事の1つです。
参加者の氏名、住所、電話番号、メールアドレス等の個人情報の他、出欠、有料イベントの場合はチケットの種別や価格、決済の有無等を管理する必要があります。
これらは個人情報となりますので、扱いには十分気をつけ、適切に保管をすることが主催者に求められます。
昨今では個人情報の取り扱いについて厳しくなっており、過去の1名あたりの流出平均損害賠償額は28,000円となっております。(引用:特定非営利活動法人 日本ネットワークセキュリティ協会「2015年情報セキュリティインシデントに関する調査報告書」)
仮に100名のイベントで全個人情報が流出した場合は2,800,000円の損害賠償と社会的信用の失墜につながります。
調査によると個人情報流出全体のおよそ30%が「紛失・置き忘れ」によるもので、イベント開催においては無視できない数値です。
このようなトラブルにならないためにも、イベント管理システム等を活用することで未然に防いでいきましょう。
イベント管理システムであれば、催事当日に会場に個人情報を持ち込む必要もなく、紛失するリスクもありません。このように、個人情報の適切な管理から、出欠、決済等の情報をリアルタイムで一元管理できるので利便性においてもオススメです。
⑦懇談会の開催
イベントによっては参加者同士の交流を目的にイベント後懇談会を開催したいという場合もあるでしょう。
懇談会の参加者管理や懇親会で用意する軽食や飲み物も主催者が行う仕事の1つです。
イベント参加者全員が懇親会に参加するケースは稀ですので、参加者が何名になるかは事前に把握しておきたいところです。
何名参加するかはイベントによりますが、ビジネス系のイベントであれば50~70%が参加する傾向があります。そのため、用意する軽食や飲み物もそれに合わせて準備しましょう。
どんな軽食や飲み物を用意するかは、イベントに参加する年齢層・性別等によって趣向を凝らすと満足度も上がります。
注意すべきは、懇談会で起こったトラブルも主催者の責任となることです。
参加者同士のトラブルはもとより、昨今ではコロナウイルス感染症対策もきちんと行う責任があります。
▼イベント当日の準備
イベント当日は会場には最低でも受付開始の1時間ほど前に入り、準備をしましょう。大規模なイベントの場合は最終リハーサルも加味し、3時間ほどは時間を取っておきたいところです。
座席の配置や受付準備、配布資料準備、プロジェクターの準備やPCとの接続等を確認します。
会場のスタッフの方に準備をお願いしている場合でもイベント当日は設営の立ち合いを行う必要があります。想定と異なる場合はすぐさま修正の指示を出すか、自身で対応をしましょう。
その後、スタッフやゲストへの挨拶、ブリーフィングの実施、イベント進行の最終チェックをすると良いでしょう。
参加者はもちろんのこと、スタッフを含む一人ひとりにイベントを楽しんでもらうよう、あらゆる方面に気配りをすることが、イベントを成功させる上で重要となります。
▼イベント終了後のお礼状送付
イベントの内容によっては参加者へのアプローチやフォローをするためにお礼状を送りましょう。
このひと手間を加えるだけで、参加者の好感度を高めたり、商談につながったり、次のイベントの参加率が上がるなど、様々な効果があります。
そのためにも参加後のコミュニケーション設計を入念に行い、適したタイミングで送付することが求められます。
特に参加者はイベント終了後が最も熱量高く、時間が経つことによって下がっていきますので即日送付しましょう。(送付は手紙・メール等、参加者にどんな体験をしてもらいたいかによって変えましょう)
即日送付するためにイベント管理システム等を用いて参加者情報と出欠を管理しておくと便利です。
2.イベント主催者が注意すべきこと
イベント主催者にはトラブルや事故が起きた際の責任を負うことに加えて、安全配慮義務というスタッフや参加者などが安全に会場内で過ごせる環境を整えなければならない義務があります。
このような対策を十分に行わない、または不十分として過失があると認められた場合、主催者には民事上の賠償責任を問われますのでご注意ください。
ここでは、以下の2点をご紹介します。
▼緊急時の対応を事前に確認しておく
緊急時とは、怪我人や体調不良者へのAEDや救急搬送、火事や地震等の自然災害または不審者の乱入やテロなどの暴動が起きたときの避難誘導等を指します。
緊急事態に遭遇すると多くの人はパニックになって平常心を保つことが難しい状況です。
そんな状況だからこそ、主催者が冷静に対処していくことが被害を最小限にとどめられるか否かの分かれ道になります。
とはいえ、十分な準備と対策をしていても防ぎきれない事態に陥ることもあります。
こうしたもしもの備えがしたい方は、民間のイベント保険あるいは最寄りの社会福祉協議会の行事保険に加入することをオススメします。
▼感染症対策を徹底する
会場にいる人たちの安全を守るという観点では、感染症に対して対策することも主催者の義務です。
具体的には、受付でのアルコール消毒や検温、非接触での応対、会場には参加者同士の距離を一定以上空ける、パーティションを設置する等です。
特に昨今では新型コロナウイルス感染症への危機意識が高まっているので、十分な準備をしましょう。
参加者が安心してイベントを楽しめるだけでなく、イベント主催者への評価にもつながります。
その他、より具体的な対策を知りたい方は「イベント 危機管理」とインターネットで検索してみてください。
市町村や東京オリンピックなど大規模イベントでの危機管理対策の他、様々な事例を知ることができるので参考になります。
3.イベント主催者は責任重大
今回はイベントの「主催者がすべきこと」と「注意すべきこと」についてご紹介しました。
主催者は安全にイベントを開催する上で、あらゆる方面に目を配らなければならないため責任重大です。
段取り八分仕事二分という言葉があるように、物事がうまくいくかは段取りで8割決まるといわれています。
イベント本番では事前に決めたタイムスケジュールに沿って、スタッフやゲストが各自の役割を担っていくので、事前準備がきちんとできていれば完成度の高いイベントになります。
反対に、準備の詰めが甘い場合やスケジュールの遅れ等は「こんなはずではなかった」と後悔するイベントに終わるだけでなく、重大なトラブルを引き起こす可能性を秘めています。
もしイベント主催の経験がない、または乏しいという場合は、イベントに精通したプロフェッショナルを頼ることも検討しましょう。
イベントのプロに依頼をすることで、主催者自身にスキルや経験がなくても完成度の高いイベントを実現できるようになります。
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